虎に似たる石を射しかば 其の矢 羽ぶくらまでせめぬ - Shot an arrow at the stone he believed was the tiger. The arrow penetrated the stone all the way up to its feathers.
本文 李広将軍と申せし・つはものは 虎に母を食れて 虎に似たる石を射しかば 其の矢 羽ぶくらまでせめぬ、後に石と見ては立つ事なし、後には石虎将軍と申しき、 貴辺も又かくのごとく 敵は・ねらふらめども 法華経の御信心 強盛なれば大難も・かねて消え候か、是につけても能く能く御信心あるべし りこうしょうぐん と もうせし・つわもの は とら に はは を くわれて とら に にたる いし を い しかば そのや はぶくら まで せめぬ、のち に いし と みては たつ こと なし、のち には せっこしょうぐん と もうしき、 きへん も また かくの ごとく てき は・ねらうめ ども ほけきょう の ごしんじん ごうじょう なれば だいなん も・かねて きえ そうろう か、これ に つけても よくよく ごしんじん あるべし 四条金吾殿御返事 しじょうきんごどのごへんじ [石虎将軍御書] せっこしょうぐんごしょ (1186頁) 弘安元年10月 (1278年) 通解(意訳) 中国の李広将軍(りこうしょうぐん)という武将は、一頭の虎に母を食い殺された辛い経験があった。 ある日、その虎が草むらにうずくまっているものを見つけた。そこで「これこそ親の仇の虎だ」と、仇討ちの一念に燃えて矢を射たところ、見事に命中した。「遂に仕留めた」と駆け寄ってみると、なんと、虎ではなく、形のよく似た石であった。しかし、矢はその硬い石を貫き羽まで突き刺さっていた。その後、矢を射ても石に刺さることはなかったという。 ある日、よく似た虎を見つけ、「母の敵討ち」という強い一念で矢を放った。 「仇討ちをやり遂げた」と駆け寄ったところ、実はそれは虎ではなく、形のよく似た石であったが、その矢は硬い石を貫き通し、矢ぶくら(矢の羽根の部分)にまで突き刺さっていた。 その後、それが虎に似た石であると気付いてからは、何度その石に矢を射ても、矢が石に刺さるということはなかったという。 このことから、後世には人々から「石虎将軍」と呼ばれるようになったのである。 あなたもまた、この故事のように、敵はあなたを襲撃しようと狙っているだろうが、法華経への信心が強盛であるので、大難も、事が起こる前に消えたのであろうか。この事を踏まえても、よくよく御本尊を信じていきなさい。 - 深き「一念」が、不可能を...